特集記事

  • 耐久性と美しい音色を兼ね備えた三味線用絹絃(きぬげん)を開発

    丸三ハシモト株式会社と農研機構は、繭糸*1強度の高いカイコ品種「響明(きょうめい)*2」を使用することにより、絹絃の課題であった耐久性の向上を実現し、かつ明るく澄んだ美しい音色を特徴とする三味線用絹絃の開発に成功しました。今回開発した三味線用絹絃は、新製品「寿糸極上響明(ことぶきいとごくじょうきょうめい)」として、来年の1月より、丸三ハシモト株式会社が販売を開始します。

    新製品の三味線用絹絃「寿糸極上響明」(図1)を来年の1月より丸三ハシモト株式会社が販売を開始します。丸三ハシモト株式会社における三味線糸としては30年ぶりの新作となります。

    図1 響明の繭⽷を使⽤した新製品「寿⽷極上響明」

    今回、販売するのは3本ある三味線の絃の中で最も細く、切れやすい三の糸(規格:13-3、14-3および15-3)*3で、今後、他の規格や琴絃など、ラインアップの拡大を予定しています。

    図2 試作した撥絃試験機による耐久性試験の結果

    絹絃は化学繊維弦と大きく異なり、音色が繊細で余韻が綺麗ですが、摩擦等により演奏中に切れる頻度が高いことが難点でした。

    そこで、今回の新製品では、農研機構が育成した高い繭糸強度と実用化に必要な生産性の両立が可能な新しいカイコ品種「響明」の繭糸を使用することで、絹絃の課題であった耐久性の向上を実現しました。

    響明を使用した新製品は既製品(寿糸極上)と比べ、破断までの撥絃*4回数が30%以上向上し(図2)、プロの演奏家による官能試験においても、耐久性が高いとの評価でした(図3)。

    図3 官能試験による使⽤感や⾳⾊の評価結果

    加えて、新製品は毛羽立ちにくく、余韻と音量に優れるため(図3)、演奏会など、大きなホールでの演奏に適しています。また、音色の分析結果からも新製品の演奏音には豊かな高域成分が含まれており、音の膨らみがあること、ならびに音色の輪郭がはっきりしたクリアーな音であることが示されています。

    本研究は、(一財)大日本蚕糸会「貞明皇后蚕糸記念科学技術研究助成」の支援を受けて行われました。

    用語の解説

    *1カイコの繭を構成している「まゆいと」のこと。*2日137号と繭糸強度の高いMC502という系統のカイコを交雑した品種の愛称。*3三味線の絃は太い方から順に一の糸、二の糸、三の糸となる。同じ三の糸でも三味線の種類、曲のジャンル、流派等により使用する絃の太さ(規格)が異なる。*4撥(ばち)で絃をはじくこと。

    問い合わせ先

    絹絃に関する問い合わせ先

    担当者:丸三ハシモト株式会社 代表取締役 橋本 英宗
    TEL:0749-82-2167

    カイコ品種に関する問い合わせ先

    研究担当者:農研機構 生物機能利用研究部門 絹糸昆虫高度利用研究領域
    上級研究員 伊賀 正年
    グループ長補佐 飯塚 哲也

    広報担当者:農研機構 生物機能利用研究部門 研究推進室 遠藤 真咲
    TEL:029-838-6005

  • 無形文化財選定保存技術保持者に認定

    弊社会長の橋本圭祐が文部科学大臣より平成30年度無形文化財選定保存技術保持者に認定して頂きました。
    これもひとえにこれまでお世話になった皆様方のおかげと改めて深く感謝申し上げます。

    宮田亮平文化庁長官より認定書を頂き、会長をはじめ社員一同 大変身の引き締まる思いでございます。
    先代の橋本太雄も頂いたこの認定書が40年ほどの歳月を超え再び次の世代に引き継げたことを大変光栄に思います。

    今後益々邦楽の裏方として糸づくりに徹し、皆様のお役に立てるように日々精進して参りたいと存じます。

    以下文化庁より抜粋

    【文化財を支える伝統の名匠たちを新たに認定!】

    我が国の固有の文化により生み出され,現在まで大切に保存・継承されてきた文化財を確実に後世へ伝えていくためには,修理の技術や,それに用いられる材料・道具の製作技術などを一体として守っていかなければなりません

    平成30年7/20(金)、文化審議会において、このような文化財を支える伝統の技「選定保存技術」の保持者として4名、保存団体として4団体の認定が答申されました。保持者としては、「時代裂用綜絖製作」の亀井剛さん、「刀装(鞘)製作修理」の髙山一之さん、「手打針製作」の小島清子さん、「邦楽器糸製作」の橋本圭祐さんの4名です。

    保存団体としては、「茅採取」の一般社団法人日本茅葺き文化協会、「装潢修理材料・用具製作」の一般社団法人伝統技術伝承者協会、「檜皮採取」及び「屋根板製作」について公益社団法人全国社寺等屋根工事技術保存会の4団体(実団体数3)です。